永遠に返ってこない返信

あるところに、高校二年生の少女がいた。
少女は黒く長い髪を三つ編みにし、目を前髪と眼鏡で見えないように隠していた。
そして夏の暑い日でも絶対に肌を露出しないようにしていた。
そのためかクラスメイトから気味悪がれ、少女は独りぼっちだった。
そんな少女には、誰にも言えない秘密があった。

少女は無意識に自分を傷つけていた。そして、その傷を見て後悔した。
 後悔した後、再び無意識に傷をつけていた。傷をつけている最中は、痛みなど感じなかった。傷に気が付くと痛みと後悔が少女を襲う。
 そうやって悪循環のように続く自傷行為。
 少女に手を差し伸べ、救ってくれる者は誰一人いなかった。
 傷だらけの両腕を見て、少女は泣きじゃくった。
「誰か、私を助けて」と。

 そんなある日のことだった。少女のクラスに転校生が来たのだ。
 少し癖のあるふわふわした茶髪で、目がぱっちりしている。
 身長もそれなりに高く、脚がすらっとしていてスタイルが良い。
 誰が見ても美少女だと言えるような、人形みたいな女の子だった。
 少女は美少女のことが気になっていた。でも、自分のような女が彼女に話しかけてはいけない。少女はそう思い、美少女をもう一度見つめて俯いたのだった。
 
「いつも一人でいるね。寂しくないの?」
 突然美少女に話しかけられた少女はビクリと驚く。何か返事をしなければと思った少女は、焦りながら言った。
「と、友達いないの。こ、この見た目だし、気味悪がられて、その、寂しいと思ったことは、何度もあるよ。でも、私、口下手だから」
 少女は、泣きたくなった。絶対に彼女も私を気味悪がるだろうと。
 そう思っていた少女に、美少女は言った。
「じゃあ、私が友達第一号だね。私、有間ミカ。よろしくね」
 美少女は微笑み、手を差し伸べた。
 少女は驚いていた。そして、嬉しかった。
「ありがとう。私、櫻野真緒。よろしくね、有間さん」
この日から少女と美少女は友達になった。

美少女は、少女を少しずつ変えていった。
少女は、美少女に短髪の方が似合うよと言われ、長い前髪と後ろ髪をバッサリと切った。
 コンタクトレンズを進められ、眼鏡からコンタクトにした。
 だが、傷を見られて嫌われるのが嫌で、服装だけは絶対に変えようとしなかった。
 そんな少女は美少女と仲良くなってから、自傷行為の回数が減っていた。
 しかし、美少女が自分以外の誰かといる姿を思い出し、無意識に傷を付けることは度々あった。
 それだけ少女は、美少女を頼りにしていた。いや、恐ろしいほどに執着していたのだ。
 そんなある日、事件が起こったのだ。

 少女はいつも通り学校に来た。その日は猛暑だったのだ。
 あまりの暑さに、少女は無意識のうちに腕まくりをしていた。
 周りの視線とひそひそ声で少女は気付く。クラスのほぼ全員に見られてしまった。
 少女は急いで、袖を戻す。その後、キョロキョロと周りを見回した。
 皆、目をそらした。少女は酷く傷ついた。
 何よりも傷ついたのは、美少女も目をそらしたことだった。
 翌日から美少女は、少女に近づかなくなった。
 少女は、また一人ぼっちになった。
 
とある日の夕暮れ時。少女は町で最高峰のデパートの屋上に立つ。
「もう耐えられない。この世界に。さよなら」
 そう言って少女は、屋上から飛び降りた。
 周囲で悲鳴が上がる中、屋上に落ちていた少女の携帯の着信音が鳴り響いていた。

美少女はメールを送る。大事な友達である少女に。
『ごめんね、辛かったよね。私に全て話してほしい。貴女は大事な友達だから。そして、あからさまに貴女を避けてごめんなさい。仲直りしたいです。このメールを見ていたら返事を下さい』
 美少女が送ったメールの返信は、永遠に返ってくることはなかったのだった。
                                  おわり