貧乏黒青年。

あるところに、貧乏な男がいた。そう、この物語は貧乏の男の話である。

 男は小さな公園をうろうろと回るように歩きながら、頭を抱えていた。
「さてどうしようか。どうするべきなのだろうか」
 ぶつぶつと呟く男を見て、周りの人々は変な人を見るような目つきで男を見た。
 年は二十代前半くらい。身長は180センチくらいであろう。
男にしては少し長い、真っ黒な黒髪。雪のように白すぎる肌。
 よく見ると顔は整っている。
しかし、目を隠すように掛けられた黒縁の眼鏡とフード付きの黒いパーカーに黒に近めのジーンズのせいか見るからに黒い怪しい男に見える。この男が貧乏な主人公である。
 男は立ち止まり大きな溜息をつく。
「バイトを掛け持ちしてやったら、こんなに給料が入るのか。でもな、俺には高額すぎるよ」
 男はアルバイトを掛け持ちするアルバイターだ。
 朝は新聞配達のバイト。昼はカフェでの接客バイト。夜はコンビニエンスストアでバイトをしていた。
働きすぎと言いたくなる状況なのだが、それを気にせずにバイトを、労働を楽しみながらお金を稼いでいたのだ。
 そしてすべてのバイトの給料日。
 給料を全て合わせると40万円を超えていた。
 そのため男は頭を抱え、溜息をついていたのだ。
 お金には困っていたが、こんな自分には高額すぎる給料をどうするべきなのだろかと迷っていた。
「おそらく10万円は生活費だろう。残りは何に使うべきだろうか」
男には欲しいというものもなく、お金の使い道に困っていた。
このままバイトを続けると、毎回この大金が手元に来るのだと思うと、男は頭を抱えたくなった。
そして、いい年なのでそろそろ就職も考えるべきだとも考えていた。
しかし自分のような男を必要とする仕事は、ないだろうと思った。
男がそう思い、絶望しかけたその時だった。
昼のバイト先であるカフェの店長から携帯にメールが送られてきた。
男は携帯を操作しメールを確認する。そしてその内容を見て驚いた。
「え、え、つまり、あ、うん!」
 男は携帯をしまい、急いでバイト先のカフェへと走って行った。

男はカフェの裏口の扉を勢いよく開け放つ。
「店長! 先程のメールは本当ですか!」
 男は息を切らしながら、茶髪のポニーテールの女性を見つめた。
「おお、黒青年。先程のメールは本当だ。君がいると女性の客が喜ぶ。美男子にイケボだからな。そのため店が儲かる。だから、ここで働いてくれ。正社員としてな」
 店長は男を見つめて微笑んだ。
「はい! あ、でも他のバイトが…」
「他のバイトを辞めてからでいいさ。頼んだぞ、黒青年」
 店長は再び微笑んだのだった。
 
人生こんなにうまくいっても、いいものだろうかと男は思った。
 うまくいきすぎて怖いくらいだったので、高額のお金を何かあった時のために貯金しておこうと男は決めたのだった。      おわり