ランチクッキング

「よし、昼飯作るか」
 買い物袋を手に台所へ入った博は、小さく気合を入れると袋の中のものを出し始めた。
 博はキムチ、豚バラ、たまねぎを机に並べて腕まくりをする。
「豚とキムチの出会いは革命だな」
 上機嫌に呟く博。慣れた手つきで材料を切ってゆく。豚バラに塩コショウを振り、次の作業に移る。
 鼻歌を歌いながらフライパンにごま油を目分量で入れ、熱し始める。
「おっと? にんにく忘れてた」
 博は買い忘れに気づき、苦笑を浮かべる。だがすぐにコンロと向かい合って置かれている冷蔵庫からチューブのにんにくを取り出す。
「……仕方ない。今日はこれを使おう」
 そういえば家族や友人から変なとこで抜けてるって言われてたな、と苦笑を深くし、博はにんにくを適当にフライパンに入れた。続けて豚バラを入れた。炒めていると肉の色が変わり始める。博はそれを見計らい、たまねぎを入れた。
「美味しそうじゃあないか!」
 テンションの昂りから博の声が大きくなる。満面の笑みでキムチをフライパンの中に放り込む。
「醤油を入れてー完成だ!」
 高らかに宣言する博。
 出来上がった豚キムチを皿に盛り付けると、明らかに一人分ではない。優に五人前近くはある。だが、これを博が一人で平らげるわけではない。
「そろそろ帰ってきそうだな」
 使った調理器具を片した博は壁に掛かる時計を見上げて呟く。
「ただいま~」
「ああ、来たか」
 玄関から聞こえた声にそう反応を見せる。
「お帰り。部活お疲れさん」
 博が玄関に出迎えに行くと、博よりも二つ程年下の少女が疲れたという表情で靴を脱いでいた。服装はジャージだ。靴箱にテニスのラケットケースが立てかけられている。
「あ、兄。今日は何作ったの?」
 台所から漂う匂いに気づいたのか、少女は顔を上げ、聞いてくる。
「何だと思う? やえ」
 ニヤニヤと笑みを浮かべ、博は妹であるやえへ聞く。
「何でも良いよ。お腹減ったし、早く食べたい」
 不機嫌そうな顔を浮かべるやえに博は微笑する。
「分かった。ならさっさと着替えて来い。冷める前に食べたいだろ?」
「りょーかい」
 博の言葉に返事をしたやえは、階段の上にある自室へ向かった。それを見送ると、博は再び台所へ引っ込んだ。
 しばらくすると、部屋着に着換えたやえが降りて来る。台所に入ると、皿の豚キムチを見るなり、顔を輝かせた。
「わあ! 美味しそう!」
「俺の作ったやつで今まで美味くなさそうなのはないだろ」
 博はそう反論するが、やえには聞こえていなさそうな雰囲気だった。
「ほら、ちゃんと座れ。飯は逃げない」
 博は今にもがっつきそうなやえに注意をしながら、席に座る。やえも落ち着いて席に座った。
 二人は声を揃えて言った。
「「いただきます」」
 言うが早いか、二人は一斉に豚キムチを食べ始める。あたかも掃除機のごとく勢いで食べられた豚キムチはあっという間に皿から姿を消した。博は三人前分、やえは二人前分といった分配で食べたようだ。
「お代わりないの?」
「まだ食べるというのか!?」
 やえの言葉に博は驚きの声を上げた。