空から降ってきた何かに驚く

高校の校舎裏の日陰は拓也にとって自室の次に落ち着く場所だ。クラスメイトは誰もいないし、日陰の中は拓也の心を落ち着かせる。昼休みは必ずと言っても良いほど拓也は校舎裏の日陰に足を運んでいる。
 それは、今現在も含めて、だ。
「次の授業って体育だっけ? このままここでサボるのもアリかもなぁ」
 ため息をつきながらそう考える。真夏にこんな真夏に長距離走を行うだなんて学校もどうかしている。授業を楽しみにしている生徒なんて全員がドMなんじぁないか?
 拓也は考えるのも面倒くさくなり、仰向けに寝っ転がり空を仰いだ。
 雪のように真っ白な雲に海のような青い空。冷たそうな色合いなのに何故こんなに暑いのだろうか? と考えていると空から白い何かが降ってくる。
「……? なんだ、あれは」
 それは落ち葉のようにヒラヒラと拓也の元へ舞い降りてくる。はっきりとしたシルエットになってくる「それ」は拓也の大好物である。
 白い純白の三角形(デルタゾーン)、パンティーが空から降ってきたのだ。
「ぶぅふっ!」
 あまりに予想外の代物が落ちてきてしまいつい鼻水が溢れてしまった。下着はそのまま拓也の顔に熱さまシートのように覆い被さり視界を防ぐ。
 まだ生暖かさと花のような良い香りが残っている。まだ脱いでから直後のようだった。
「ど、どうしてパンティーが降ってくんだよ」
 龍玉を7個集めて下着を強請った覚えはないし、それは豚の願い事だ。
 拓也はパンティーの降ってきた方向を見る。その方向は二学年、つまり、拓也の学年の教室だ。そして窓が開いているのは拓也の教室……付近の女子更衣室、次の時間に体育を行う女子達が着替えているはずの場所から降ってきたのか。
「くそ、一体誰のなんだ?」
 パンティーを握りしめながら呟くと、向こうから女子の声が聞こえてくる。拓也はパンティーを握りしめたままそのまま近くの木に隠れた。
 別に隠れる必要があるわけではないが……なんとなく身の危険を感じたのだ。
 現れたのは二人組の女子、確か別のクラスだったのでたまたま通りかかっただけのようだった。
「んだよ、驚かせやがって……」
 安心した拓也は木から姿を現そうとして、
「ちょっと、拓也君。またこんなじめじめしたところにいるの?」
 聞き覚えのある声が耳元に届いた。彼女は拓也と中学からの付き合いであり、クラス委員長である由奈だった。
 由奈は他の女子とは別で、制服姿のまま拓也の元へと現れた。まだ着替えてなかったのか。
 怒っているのか、顔を赤くしながら由奈はこう言う。
「もうすぐ授業が始まるし早く早く教室に戻って着替えなさいよ」
「……わかったよ」
 下着の持ち主が特定出来なかったのは心残りだが、放課後になればまた来るかもしれない。拓也は渋々と教室に戻ろうと――
「由奈? お前は戻らないのか?」
 その場を動かない由奈はビクリッと肩を震わせながら呟いた。
「そ、その……この辺で落とし物をしたかもしれないからそれを捜してから行くわ」
 ……おめぇかよ! パンティーを落としたのは!
 ツッコミを入れたい衝動に駆られるが、ここはグッと抑えた。
「そういや、さっき、空から真っ白なおパンティーが降ってきたんだけど由奈の落とし物ってそれか?」
 由奈は赤い顔を更に真っ赤に染めた。そして首を振りながら全力での否定。
「ち、違う違う違う! 私がそんなもの落とすわけないじゃない!」
「そうだよなぁ、でも落とした奴はマジで不幸だと思うぜ」
「え?」
 首を傾げる由奈に俺はこう告げる。
「だって、そのパンティー、俺の近くにある木の上に引っかかってんだからなぁ」
 由奈の視線は拓也から木の上にチェンジ。目を皿のようにして見つめていた。
 ……目茶苦茶分かりやすいな、おい。
「それじゃ、俺は先に行くけど、由奈も早く落とし物見つけろよ」
「う、うん」
 そのまま校舎から教室の方へと向かう振りをしてチラリと後ろを振り返ると――
 木登りをしている由奈の姿があった。
 ってか、行動すんの早すぎだろ! まだ俺の姿が消えるまで待てねーのかよ!
「やっぱ、お前がノーパンなんじゃねぇかァ!」
「い、いやぁ、こっち見んなぁ!」
 叫ぶ俺を全力の悲鳴と回し蹴りが襲いかかる。
その後、拓也がパンティーを持っている事が分かった瞬間、由奈の暴力は更に酷いものとなった。