寝起き

目覚まし時計の騒々しい音が部屋内に鳴り響く。
「うーん……」
 ベッドから這い出した誠治は手探りで枕もとの目覚まし時計を探し当てる。
 バン、と叩きつけるように目覚ましを止めた。
「おや、すみ」
 そう呟き、誠治は再び寝息を立て始めた。
 再び、部屋に静けさが戻る。
「二度寝するなああ!」
 部屋のドアが勢い良く開く。 横のクローゼットの戸にドアノブ型のへこみが出来る。
 入ってきたのは、十四~五歳ほどの少女。 外出をする気なのか、おしゃれな出立ちだ。
「起きてよ!」
 誠治の体を揺らし、起こそうと試みる少女。 ドアが開いた音で既に目が覚めていた誠治だが、狸寝入りを決め込む。 しばらくの間、駆け引きが続いたが、先に折れたのは誠治のほうだった。 耳元で大声を出されるのに耐え切れなかったのだ。
「あー、もう。 うっせえよ!」
 布団を跳ね除け、起きる誠治。 少女はその拍子に吹き飛ばされ、本棚のある方へ転がった。
「こんな二度寝日和の休日に、人を起こして何の用だ?」
「いったい! 何すんの!」
 頭を抑えながら、跳ねるように立ち上がった少女は、不機嫌な様子の誠治に食って掛かった。
「こっちのセリフだ、由佳。 人の安眠を邪魔しやがって」
「だって、買い物に付き合うって言ったの兄ちゃんでしょ」
 由佳のそのセリフに、は?という顔をした誠治は、少し記憶を探る。
「……ああ」
 思い出したようで、苦笑と申し訳ないという感情を浮かべる。
「そういえば、そんな話してたっけな。 すまん、抜け落ちてた」
 謝罪を口にする誠治。 由佳は、しばらくむくれていたが、機嫌を直したのか、ニコニコした。
「じゃあ、すぐに着替えて、下にきて」
 そう言って、部屋から出て行った。
「相変わらず、台風みたいなやつだな」
 誠治は呟きながら、ドアを閉め、クローゼットを開けるようにする。
「このクローゼット、いっつも思ってたけどドア開けてると使えないな。 って、壊れてるじゃん、由佳のやつ」
 へこみを見つけ、犯人へ恨みを込める誠治。
 その後、恨みを込め飽きた誠治は、クローゼットから適当に出した服装へ着替えた。 ケータイをズボンのポケットに突っ込み、由佳の待つリビングまで降りてゆく。
 両親は両方とも海外に行っているため不在。 そのため、リビングには由佳一人しかいない。
「遅い」
「遅いって、一応急いだんだが」
 ソファに座って文句を言う由佳に、誠治はそう返す。
「それで、どこに買い物に行くんだ?」
「特に決めていない。 ショッピングセンターで良さ気な物を見る、感じ?」
「いや、疑問で返すなよ」
 呆れた顔をする誠治。 由佳はソファから立ち上がる。
「良いから、のんびり見て歩くの!」
「はいはい。 了解しましたよ」
 仲良し兄妹はそんな会話を交わしながら、家を出た。