星の下の出会い


「ここなら撮れるかな」
 天文部部長の啓斗は、星を撮影するため森に訪れた。
 この森は全体的に木が低く星空が見えやすい場所だが、道が複雑で人は寄り付かない撮影の穴場。辺りを見ても木々しかなく、上を見れば無数の星が輝いている。
 望遠鏡とカメラの位置を決めている啓斗の視界の隅で、何かが動く。他の森でも野生動物に遭遇してきた啓斗は、落ち着いて動いたものの方向に体を動かした。
 背の高い雑草を静かにかき分けて先を覗くと、黄色い着物に白い帯を巻いた子どもが大木を見つめていた。
「君、こんな時間に一人でどうしたの? 迷子?」
「お前こそ、この森に何の用だ。……人間」
 不機嫌そうに振り向いた子どもの額には、一本の黒く小さな角が生えている。
「お、鬼……?」
「私は木霊だ。角はこの森に住む木霊の証で、鬼とは関係ない」
 人とは違うオーラを放つ木霊は、雑草を飛び越えて啓斗が設置した望遠鏡に近づいた。
「人間。これは何だ」
「それは星を見るための望遠鏡だよ。あと、俺のことは啓斗って呼んで」
「馴れ馴れしいな。私は二千歳で、人間よりも確実に年上だぞ」
「二千歳かあ」
(アニメとか漫画でそういう設定を見たんだろうな)
 木霊の話を信じていない啓斗は、弟に接するように木霊の頭を撫でる。それが気に食わなかった木霊は、啓斗の手を払い強い口調になった。
「撫でるな! 私はこの森の精霊だぞ! 望遠鏡なんか使わなくても星は良く見えるし、啓斗くらいなら永久に森を彷徨わせられる力もあるんだぞ!」
「やっと啓斗って呼んでくれた! ありがとう!」
「わ、私の話を聞け! ……もう、人間に興味ない!」
 怒りながら話し顔が赤くなった木霊は、「帰る」と言って啓斗に背を向ける。話すのが楽しくなった啓斗は、撮影のことをすっかり忘れて、生い茂る木に向かう木霊を追った。