目覚めの音は母の音


「蓮、起きなさない!」
 下の階から母の叫び声が聞こえる。
「ん……ぁ」
 その大きな声に起こされ蓮はベッドから降りる。瞼を半分閉じながら蓮は制服に着替え部屋を出る。階段を降り、リビングへ向かう。リビングには、父が座っており新聞を読みながらトーストを咥えていた。
「あんた、もうちょっと早く起きれないの?」
 と、母が蓮に迫る。
「別に良いじゃん。遅刻してるわけじゃないんだし」
「いい加減一人で起きられるようにしないさいよ。社会に出たときに困るわよ?」
「はいはい。分かりましたよ」
 蓮は嫌そうに返事をしながら椅子に座り朝食のトーストを食べ始める。
「ちょっと。……はぁ。お父さんからも何か言ってよ」
 と、母は父に視線を送る。
「朝からそんなに怒るんじゃない。あまり叱り過ぎてもダメだからな」
 と、新聞をめくりながら父は言う。
「お父さんまで……」
 母はため息をつく。
「ごちそうさま。じゃ、行ってくる」
 と、父は新聞をたたみ、玄関へ向かう。
「いってらっしゃい」
「んじゃ、俺も行くわ」
 と、蓮も遅れてリビングを出ていく。
 外に出ると、通勤や通学をしている人たちで少し賑わっていた。
「蓮、気をつけてな」
 と、父が蓮の肩をたたく。
「分かってるよ。父さんもね」
「ああ」
 二人は、それぞれ逆の方向に歩いていく。蓮はふと、振り返り父の後ろ姿を見る。父の背中は蓮に頑張れよと言っているかのような背中だった。会社ではいろいろな作業に追われ帰ってくるのが遅い父だが、いつも優しくしてくれていた。蓮は父が少し早めに母に起こされるを知っている。家の中では母が一番最初に起きて、二人を起こすのだ。
「ありがとう。父さん、母さん」
 そう言うと蓮は、学校に向かって歩いて行った。