その共犯は偶然か故意か


 二時限目の授業が終わり、休み時間となった。生徒たちはそれぞれ、他クラスの友達のところへ遊びに行ったり、仲のいい子とお喋りを楽しんだりしている。そんな中、小雪はクラスメートの太一の奇行を目撃してしまった。彼は人目を気にしながら、教室の出入り口付近にある掃除ロッカーの中に入り、静かに扉を閉めたのだ。
 小雪はロッカーに近付き、行動理由を尋ねてみた。
「……ねえ、太一。何やってるの」
「そ、その声は小雪か⁉ 頼む、今話しかけないでくれ!」
「私だって、太一が中にいるとはいえ、掃除ロッカーの扉に話しかけたくなんてないんだけど……。いい年した高校生が、いきなりロッカーに入り込んだのを見て、黙っているわけにもいかないでしょ。何でそんなとこに入ってるの」
 小雪の質問に、太一はロッカーの扉を半分ほど開けて答えた。
「隣のクラスにいる歩夢を驚かせるんだよ。あいつ、ドッキリを仕掛けるのが好きだろ? 俺はいっつもその実験台に使われるから、たまには仕返ししようと思ってな」
「え、まさか、ロッカーから飛び出して驚かすつもり……?」
「そうだけど?」
 そんな子供だまし、通じるわけがない。そう言おうとしたが、それより早く太一は扉を閉めてしまった。
「そろそろ歩夢が来るだろうから、ロッカーから離れて。歩夢に俺のこと聞かれても、知らないって言っておいて」
「あー……はいはい」
 これ以上は何を言っても無駄だと悟り、小雪は自分の席に戻る。次の授業の教科を出し、小説を読んで気を紛らわそうとしつつも、ロッカーが気になって仕方がない。ちらちらと横目でロッカーに視線を向けていると、出入口に歩夢がいることに気付いた。
(あ、来た。太一、いつ出てくるのかな……)
 ロッカーと歩夢をじっと見つめていると、それに気付いた歩夢が、笑顔で小雪に手招きをした。口元に人差し指を添えているので「喋らずに来て」という意図が見て取れる。
 不思議に思いながらも、小雪は何も言わず歩夢のところへ行った。歩夢はメモ帳に何かを走り書きして、小雪に渡してきた。
『ちょっと机貸して』
(机……? 何に使うんだろう……)
 疑問と嫌な予感が湧いてきたが、同時に来た好奇心の方が勝り、小雪は自分の机を持ってきた。歩夢は「ありがと」と小声で小雪に礼を言うと、机をロッカーの扉にぴったりとつけ、更にそれを手で押さえた。それを見た小雪は全てを察する。
(あ、これ、バレてるな)
「おーい、太一。遊びに来たよー」
 歩夢がいつも通りの声量で呼びかけた瞬間、ロッカーからガタっと物音が響く。が、歩夢が扉を押さえつけているため、太一はそこから出られない。
「え⁉ ちょ……何で⁉ おーい!」
「おお、太一! どうしたの!」
 焦る太一の声に、歩夢はわざとらしい驚きを見せる。それに気付いた太一が、怒りの声を上げた。
「歩夢! テメェ何しやがった! てか何でわかった⁉」
「小雪ちゃんがロッカーの方を見てたから、何かあるのかなーって思ってさ。ねえ太一、今どんな気分? 僕にイタズラしようとして失敗して、今どんな気分?」
「ああああああああああ! もおおおおおおおおおお!」
 荒ぶるロッカーと、その前で愉悦の笑みを浮かべる歩夢。わかりきっていたが、この結果を招いたのは自分のせいな気がした小雪は、心の中で「太一、ごめん」と謝罪した。