空から舞い降りるドラゴン

二千十九年、4月。私は、この日とんでもない出会いをした。
 入学式を終えた高校からの帰り道。
大抵どんな学園モノでも、友達を早々に作り、それとともに帰る。そのような感じを夢見る人が多いが、私は生憎日頃陰に生きるもの。アニメと乙女ゲーがお友達。私は俗にいう腐女子なのだ。だから私は一人。これについてはあんまり特別な感情を抱いてはいない。以前からそんな感じだったから。
そんな私はスマホで次のゲームの情報をあさりながら歩いていると、空から突如何かが落ちてきた。それは、空想世界ファンタジーのような出会いだった。俗にいうドラゴンだった。
 そいつの大きさは、某猫キャラのような比較をするならば、おそらく林檎一つ分。蝙蝠の赤ちゃんのような羽に、さながらヤモリのような華奢な体躯。威嚇目的で炎を吐くも、見ただけでいうならそれは百均に売っているライターと同じかそれ以下の火力。炎が駄目ならと声で威嚇するも、鳴き声を文字であらわすならば「ぴゃー」といった感じ。空気を含んで音が鳴るおもちゃを間違えて踏んでしまった時のような。
 総合評価。めっちゃ可愛い。
 次の瞬間には、母性本能が爆発し、その子を優しく保護した。手ごろなレジ袋の中に優しく入れ、急いで自宅へ帰った。その時の私は、人生で最高の走りを体現した気がする。ウサイン・ボルトにも負けない自信があった。

 自宅。多分バスで通う人間がうらやむほど学校から近い。およそ徒歩五分ほど。
 人生で初めて全速力で走ったからか、ぜえぜえと大きく息を乱し、汗がぼたぼたと流れ落ちる。ずっとここにとどまったら水たまりができそうなほど。
 袋の中では相変わらず「ぴゃー」と可愛い鳴き声が響いている。私はいてもたってもいられず、お母さんに手っ取り早く帰ってきたことを伝えると、急いで自室にこもった。
 小さいドラゴンを袋から出し、自室の机の上に開放する。まだ私に対しては警戒心をのぞかせてはいるものの、部屋にたどり着いて速攻付けたクーラーが功を奏したのか、少し売らしそうだった。
 しかし、ここでふと我に返る。いくらこんなに犯罪級に可愛い生物を保護するとはいえ、相手は仮にもドラゴン。この現代社会、ドラゴンなんてそう信じる人間はいないだろう。信じたとしてこの子を見て、果たしてドラゴンと認識できるのだろうか。というかそれ以前に、私でこの子をどうできるというのか。育てようにも、えさの問題もある。何が好きか。何が嫌いか。全く分からない中でこの子を育てるというのも、そこそこ問題だ。生き物には命がある。それを無碍にするのはよくないだろう。
 しかし、ドラゴンは今にも落ちそうなほど弱弱しく羽ばたいて私の手の上に乗っかり、「僕は元気だよ」といわんばかりに「ぴゃー」と鳴いた。
「よし、決めた」
 その瞬間、現代社会にとんでもない育てや(ブリーダー)が現れた。
「私、この子を全力で育てる」
 とんでもない陰キャと、とんでもないほど可愛いドラゴンとの共同生活が、始まった。