みんななかよし

 いつもの河川敷に着くと、すでに龍子さんと美春、和音が来ていた。どうやら龍子さんはいつも通り美春たちにセクハラを仕掛けているみたいだ。
 これはこれで目の保養になるのだが、バレると後が怖い。
「おーっす」
 多少の気まずさと嫌な予感を感じたが、声を掛けながら近づく。
「おー、おせーぞ善治ぃ」
 俺に気付いた龍子さんがセクハラを止めて立ち上がったと思ったら、やっぱりいつの間にか背後に回られており、首に抱きつかれた。と思いたいのはやまやまだが、本当はチョークスリーパーをかけられていた。
「うっ!」
「やっぱ、お前の首は絞めやすいなー」
 もちろん、本気で絞められているわけではない。龍子さんに本気で絞められたら俺なんかの首なんか簡単にへし折られてしまうだろう。これはスキンシップのようなものだ。
 苦しいことは苦しいのだが、それはそれとして、背中に当たる柔らかい感触に今日もハッピーな気分の善治くんであった。
「善治、鼻の下伸びてる」
「善治のえっちー!」
 セクハラで乱れた服装を直しながら美春ちゃんたちがいわれのない悪口を飛ばしてきた。
 おのれ、余計なことを……。この状況で鼻の下が伸びない男はいないだろ!
「なにぃ? そんな破廉恥魔人はこうだ!」
 やっぱり首を絞める力が強くなった。
 うぐぐ……。これはさすがにまずいかも。
「りゅ、龍子さん……、マジに落ちそう……!」
 絞められた喉で何とか声を絞り出しつつ、首にかかる腕をぺしぺし叩いて降参の意を示すと、意外とすんなり放してくれた。
「はぁ……。苦しかったぁ」
 河川敷の草っ原にどかりと腰を下ろして、首をさすりながら激しく息を吸う。
「大丈夫?」
 美春が心配そうに顔を覗き込んできた。
「心配してくれるなら、あそこであの発言は無いと思うんだが」
「ごめんね、ああ言った方が早く抜けられるかなと思って」
 実際その通りかもしれないし、その気持ちは非常にありがたいのだが。
「実際、早く解いてもらえたんだから感謝しなさいよね」
もう一人、和音は腰に手を当てて、貧相な胸を張り、いかにも「感謝しまくって崇め奉りなさい!」と言った様子だった。
 これは制裁を加えてやらんといかんな。
「おのれちんちくりんめ!」
 和音に抱き着いて頭をこれでもかと撫でてやる。こうすると和音は体から力が抜けてへたり込んでしまうのだ。
「わーん! 善治がいじめるー!」
 へたり込んだまま無様に地面を這って龍子さんに助けを求める和音。
「てめぇ和音! 龍子さんに泣きつくとは卑怯な!」 
「なにぃ? かわいい和音をいじめる奴は鉄拳制裁だ!」
「くそう! 美春ー!」
 情けないのは覚悟の上。美春に助けを求めるが。
「きゃー、龍子さんたすけてー」
 思いっきり棒読みの悲鳴を上げながら、すでに龍子さんの側についていた。
 くそ! 味方がいねぇ!
「破廉恥魔人、覚悟!」
「破廉恥魔人て呼ぶな!」
 俺が龍子さんにボコボコにされていると。
「よっ! 朝から元気で何よりだぜ!」
「うぃーす」
「みんなおはよー」
 祭男を筆頭に武流、真慈がやってきた。
「相変わらずボコられてんなー」
「よくもまぁ龍子さんに喧嘩を売れるもんだぜ」
「がんばれ善治ー」
「呑気なこと言ってないで助けてくれー!」
 龍子さんが飽きるのには数分を要したのだった。