写真映像科卒
Graduate
狩野 良介さん
楽天イーグルス専属カメラマン
Graduate
狩野 良介さん
楽天イーグルス専属カメラマン
社会人インタビュー
体育の先生から写真の世界へ。カメラに魅了された意外なきっかけ
- インタビュアーA:
- まずは「入学前の自分」という項目で、入学前はどんな仕事や生活をしていましたか?
- 狩野さん:
- 何度か転職しています。最初は仙台大学の体育学部を卒業してから、東京の幼稚園で体操の先生をやっていました。
- インタビュアーA:
- えっ、東京にいたんだ。
- 狩野さん:
- はい。幼児体育指導員のような、民間企業の仕事です。幼稚園に派遣される体操の先生といった感じですね。
- インタビュアーA:
- へえー。東京のどこに住んでいたんですか?
- 狩野さん:
- 足立区です。一番近かったのは亀有駅ですね。
- インタビュアーA:
- えー、そうですね。その次はどんな仕事をされたんですか?
- 狩野さん:
- そこも1年ぐらいで辞めて戻ってきて、地元の多賀城にある体育協会に勤めました。事務局などで働いていました。
- 阿部和美先生:
- 多賀城市立体育館の中にある組織だよね。
- 狩野さん:
- そうです。 事務局などで働いていました。
- インタビュアーA:
- 体育協会のインストラクターの次が、写真館ということですか?
- 狩野さん:
- はい。次が泉区にある写真館です。
- 阿部和美先生:
- 私は写真館さんと直接の取引はないけれど、出張の現場でカメラマンさんをよく見かけるよ。 そこにアシスタントとして入ったの?
- 狩野さん:
- 正社員として入りました。
- インタビュアーA:
- 元々は写真とは関係ない道を歩んできたわけだけど、そこで初めて写真に出会ったんですか? それとも趣味ではやっていたんですか?
- 狩野さん:
- 趣味ではやっていました。 それを一度仕事にしてみようかなと思って。
- インタビュアーA:
- なるほど。体育協会には何年くらいいたんですか?
- 狩野さん:
- 2年くらいですね。
- インタビュアーA:
- 写真館には?
- 狩野さん:
- 3年くらいです。
- インタビュアーA:
- どんどん期間が延びていくね(笑)。最初が1年、次が2年、その次が3年。それで、その次は?
- 狩野さん:
- そこから、ニチデに入学しました。
- インタビュアーA:
- ついに来ましたね。入学した時は何歳でしたか?
- 狩野さん:
- 28歳でした。
- インタビュアーA:
- 20代だったんですね。写真は写真館に入るまで、普段どういう風に撮っていたんですか?
- 狩野さん:
- 自分でちょっといいカメラを買って、幼稚園や体育協会のスポーツイベントなどでボランティアとして子供たちを撮っていました。趣味の記録程度ですけど。
- インタビュアーA:
- カメラに出会ったきっかけは何だったんですか?
- 狩野さん:
- 大学の時に風景を撮りたくて、デジカメを興味本位で始めたのがきっかけです。ちゃんとした一眼レフは、東京で就職した時に秋葉原のヨドバシカメラで見て欲しくなり購入しました。
- インタビュアーA:
- 誰かの影響ですか? それとも自発的に?
- 狩野さん:
- 自発的ですね。 親がカメラ好きだったということもありません。 なんとなく手に取って始めたのですが、やっぱり子供たちを可愛く綺麗に撮ってあげたい、保護者の方に見せてあげたいという気持ちがあって、いいカメラを買ってみようかなと思いました。
「独学を超えたい」28歳、貯金を切り崩して決めた学び直しへの覚悟
- インタビュアーA:
- そもそも高校時代、塩釡高校から仙台大に行く時にそっちの道に行こうとは思わなかったんですか?
- 狩野さん:
- 全然思わなかったです。
- インタビュアーA:
- 目覚めたのは本当に大学を卒業してからなんですね。そのきっかけになる出来事は何かあったんですか?
- 狩野さん:
- 体育協会時代に、JOC(日本オリンピック委員会)主催の被災地応援プロジェクトというイベントがあったんです。その時に帯同していたJOCのプロカメラマンの方に、一眼レフの設定や撮り方を教えてもらったんですよ。そしたらすごく上手に撮れて。目覚めたのはまさにその日ですね。
- インタビュアーA:
- なるほど。パワーポイントでチラシを作ったりする以外には、クリエイティブな分野への興味はなかったんですか?
- 狩野さん:
- 幼稚園や体育協会で募集チラシを作る程度でしたね。
- インタビュアーA:
- Photoshop(写真編集ソフト)に出会ったのは写真館に入ってからですか?
- 狩野さん:
- そうです。就職してから初めて触りました。
- インタビュアーA:
- 普通に生きていたらPhotoshopに出会わないもんね。 では、なぜそこから学校に入って学び直そうと思ったんですか?
- 狩野さん:
- 写真館時代、お試しで全国規模の写真展に応募してみたんです。 そしたらたまたま入選してすごく嬉しかったんです。 でも、パンフレットに載っている特選などの作品を見た時に「上には上がいる。上手な人がいっぱいいるんだ」と痛感しました。
独学の見よう見まねではなく、ライティングの基礎からしっかり学んで世の中に胸を張れるようになりたいと思って、入学を決めました。 - インタビュアーA:
- 学費はそれまで働いて貯めてきたお金で工面したんですか?
- 狩野さん:
- そうです。
- インタビュアーA:
- あと「フォトマスター検定を取りたかった」とも言ってましたよね?
- 狩野さん:
- そうですね、その資格を持っていれば堂々とできるかなと思って。
- インタビュアーA:
- でも、あの検定なくなっちゃうんだよね。
- 阿部和美先生:
- 今年で試験が最後で、再開の見込みがないらしいです。11月がラストチャンスですね。
- インタビュアーA:
- 狩野さんは今何級をお持ちですか?
- 狩野さん:
- 1級を取りました。
- インタビュアーA:
- おー、すごい! 難しいでしょう、1級は。
- 狩野さん:
- 僕は難しかったなと思います。学生の時に取得しました。
- インタビュアーA:
- 話が戻るけど、写真館には求人を見て入ったんですか?
- 狩野さん:
- ハローワークの求人です。「初心者大歓迎」という文字を見て応募しました。
- インタビュアーA:
- まずはそこからですよね。では、オンラインスクールや大学、独学ではなく、あえて専門学校を選んだ理由は?
- 狩野さん:
- 検索して一番に出てきたのがニチデだったので。フィルムの授業があるのが魅力的でした。僕はオンラインが苦手なので、先生と直接会ってカメラを操作しながら学べる環境がよかったです。あとはオープンキャンパスで阿部和美先生のフィルム授業を体験して、暗室で写真が浮き上がってくる様子に感動したのが大きかったですね。
- 阿部和美先生:
- 一番よく「騙されて」くれたよね(笑)。
- 狩野さん:
- やったことがなかったので、あの「ベタ焼き」が浮き出てくる感覚は本当に新鮮で感動しました。
- インタビュアーA:
- 他の学校は見てましたか?入学の決め手は何でしたか?
- 狩野さん:
- 東京の芸術大学も候補には挙がりましたが、お金もかかるし現実的ではないなと。やはりオープンキャンパスでの体験が強烈でした。写真館での経験があったので多少は知識があるつもりでしたが、ベタ焼きという言葉の意味すら知らなかった。「自分の独学を超えてくる先生に出会えた」ということが、入学の決め手になりました。
入学前に感じていた不安や迷い
- インタビュアーA:
- では次ですが、入学前に感じていた不安や迷いはありましたか?
- 狩野さん:
- やはり会社を辞めることですね。貯金があるにせよ毎月の収入が一旦途絶えるわけですし、本当に写真を今後の仕事にしていけるのかという不安はありました。年齢的に周りが結婚したり会社で昇進したりする中で、自分がそこから一旦抜けることで「出遅れてしまう」という感覚はありましたね。
- インタビュアーA:
- 28歳で入学するのはよっぽど勇気がいる決断だったと思います。親御さんには相談しましたか?
- 狩野さん:
- 保証人になってもらう必要があったので話しましたが、「好きにしなさい」という感じで反対はされませんでした。学費も自分で出しましたし。
- インタビュアーA:
- 写真館を辞める時は引き止められましたか?
- 狩野さん:
- あんまりいい終わり方ではなかったですね(笑)。「うちで教えるからここでいいじゃん」と言われました。
- インタビュアーA:
- 給料をもらいながら学べるわけですしね。それを押し切って「辞めます」と言ったんですね。今でもその会社の社長との繋がりはありますか?
- 狩野さん:
- さすがに時間が経ったので、現場で会えば普通に挨拶できる関係です。
社会人経験を武器に。不安を「現場での実践」と「人脈」へと変えた突破口
- インタビュアーA:
- では、次の質問です。最初の会社を辞めて収入がなくなることや、写真を本当に仕事にできるのかという不安があったと思いますが、まずはそれをどう乗り越えたんですか?
- 狩野さん:
- そこは自分の社会人経験を強みとして活かしました。 講師の先生との授業外でのつながりを大切にして、現場に連れて行ってもらったり、仕事を紹介してもらったりしましたね。 授業中も、自分が現場で見て疑問に思ったことを直接質問して、個別に教えてもらうこともありました。
- インタビュアーA:
- なるほど。学生時代、バイトはしていましたか?
- 狩野さん:
- 塩釡のスーパーで品出しのバイトをしていました。 その時から現在の仕事関係者のお手伝いもしていましたね。 学生時代の紹介で繋がった方々とは今も交流があります。 先生に紹介していただいた東松島のデザイナーさんや、現在の仕事関係者もそうです。 実際、そこで出会った方が楽天の仕事を紹介してくれました。
- インタビュアーA:
- そんな経緯があったんですね。やはり人との繋がりは大事ですね。
- インタビュアーA:
- では、入学後の授業の話に移りますが、写真ってどうしてもモデル撮影などでチームプレーが必要になりますが、自分よりも若い世代の子たちとは、どのような関わり方をしていましたか?
- 阿部先生:
- 年上なりに率先してやりつつ、でも出しゃばりすぎないように気をつけていたんじゃないかな。狩野くんだけ社会人経験もカメラマン経験もあったから、みんなが知らないことを知っている。知識をひけらかすと周りがポカーンとなってしまうんだよね。でも時間が経つにつれ、その辺りの塩梅がわかってきて、上手く馴染んでいきましたね。
- 狩野さん:
- 本当にそんな感じです(笑)
ダメ出しの連続から「光の性質」を掴むまで。暗室とライティングの発見
- インタビュアーA:
- 実際、ニチデに通ってみた印象はどうでしたか?
- 狩野さん:
- いい意味で、思っていたよりもずっと良かったです。毎回の授業に新しい発見や驚きがありましたし、撮った写真がだんだん良くなっていくのがひと目で分かり、光の性質が見えてきた実感がありました。
- 阿部和美先生:
- 1年生の前期はすごく自信満々だったけれど、技術が追いついていなかった。だから出した作品に全部ダメ出しされる状態。でも、基礎をしっかり学んでから撮るようになったので、後半は綺麗な写真を撮ってくれるようになりましたね。
- インタビュアーA:
- 写真は撮ったらすぐに結果が見えるので、成長を実感しやすい面もあると思います。では、授業以外での学校の印象はどうでしたか?
- 狩野さん:
- 他科との横のつながりがもっとあるのかなと思っていました。実際、クリエイティブデザイン科の人たちとは交流がありましたが、当時はコロナ禍ということもあって、入学式もなく、学園祭も展示のみの小規模な開催でした。以前のような盛り上がりがなくて残念な面もありましたが、卒業制作や進級制作の時期に「狩野さんに写真を撮ってほしい」と個人で声をかけてくれる学生が結構いて、それは嬉しかったですね。
- インタビュアーA:
- なるほど。ちょうどコロナの影響を大きく受けた、ある意味で不遇な世代ですよね。そんな中での学生生活に不安はなかったですか?
- 狩野さん:
- むしろ「いい機会だ」とポジティブに捉えていました。もし学校に行くために会社を辞めていなければ、あの状況で写真館(アルバム業者)がどうなっていたか分かりません。当時はイベントが全て中止になり、アルバムに入れる写真がないという壊滅的な状況でしたから。逆に、社会を俯瞰して自分を見つめ直すいいタイミングだったんだ、こういう運命だったんだなと考えて勉強に打ち込んでいました。
- インタビュアーA:
- 授業の中で特に印象に残っていることはありますか?
- 狩野さん:
- やっぱりフィルムの授業でのライティングと露出ですね。 露出計なんて使ったことがなかったので、数値に合わせて撮るとその通りに写るのが新鮮で面白かったです。 あとは動画の先生も優しくて楽しかったですね。
遠回りは最短ルートだった。楽天イーグルスの専属カメラマンとして活躍する今
- インタビュアーA:
- 卒業後の変化についても教えてください。
- 狩野さん:
- 入学前は「遠回りしている」という不安がありましたが、実際は近道だったと思えるようになりました。 基礎を学んだことで、楽天イーグルスさんと契約してからも、どんな撮影案件にも対応できる自信がつきました。
- インタビュアーA:
- 楽天の撮影はいつから決まっていたんですか? 卒業後は自分でスタジオを出すと言っていたよね。
- 狩野さん:
- スタジオを出すのは一旦止めて、ギリギリで内定をいただいた楽天に直で行くことにしました。
- インタビュアーA:
- 楽天の撮影で学校の学びが活きていると感じることは?
- 狩野さん:
- 突発的な物撮りですね。ライトが1個しかないような不十分な環境でも、学んだ知識でなんとか形にできます。あとは選手の肖像写真も、スタジオライティングの知識をフル活用して撮っています。楽天の選手は僕ともう一人の二人で全部撮っているんですよ。
楽天のイベントで写真講座をやる時も、フォトマスター1級の知識があるので自信を持って話せます。
「後ろ盾」としての学校と資格。プロへの道を切り拓くために必要だったもの
- インタビュアーA:
- 最後の質問です。入学前の自分に声をかけるなら?
- 狩野さん:
- 「入ったほうがいいよ、勉強したほうがいい」と言いたいですね。 あとは「望遠レンズの使い方を先生に聞いておけ」と(笑)。
- 阿部和美先生:
- 今の職場を辞めてフリーランスになるにしても、何の「後ろ盾」もない状態なのが不安だったんだよね。カメラマンという職業には国家資格がないから、自分で名乗れば誰でもなれてしまう。だからこそ、学校を卒業したという実績や、フォトマスター検定1級という「肩書き」が、自分を守るために必要だと感じていたんだろうなと思います。
迷っている社会人へ
- インタビュアーA:
- 進学に迷っている社会人や既卒の方にメッセージをお願いします。
- 狩野さん:
- 入学して損はないから、ぜひ一歩踏み出してほしいです。
- 阿部和美先生:
- 社会人入学だと金銭面が一番のネックだと思いますが、費用対効果はどうだった?
- 狩野さん:
- 安かった、というか「お得だった」と感じます。決して無駄なお金ではありませんでした。
- インタビュアーA:
- そう思えるのは自分が努力したからですよね。野球の撮影を今後も極めていくんですか?
- 狩野さん:
- 長くやるほどに見えるものが増えてきて、撮れなかったものが撮れるようになっています。もうちょっと頑張ってみようかなと思っています。
- インタビュアーA:
- ありがとうございました。
- インタビュアーA:当校広報担当職員
- 阿部和美先生:当校写真映像科講師