Teacher&Student
学生対談
デジタルアニメ科
Teacher
鈴木 裕先生
アニメーター/イラストレーター
Student
小笠原 陽菜さん
デジタルアニメ科2年(岩手県立盛岡第二高等学校卒)
Student
多田 姫菜さん
デジタルアニメ科2年(宮城県宮城広瀬高等学校卒)
Teacher
鈴木 裕先生
アニメーター/イラストレーター
Student
小笠原 陽菜さん
デジタルアニメ科2年(岩手県立盛岡第二高等学校卒)
Student
多田 姫菜さん
デジタルアニメ科2年(宮城県宮城広瀬高等学校卒)
5年後、10年後のこの業界について
- インタビュアーA:
- 皆さん、改めてよろしくお願いします。本日はWebやパンフレットに掲載するための対談ということで、リラックスしてお話しいただければと思います。
昨今、AIの台頭が凄まじいですが、アニメ業界においても影響は大きいと感じています。5年後、10年後、この業界がどのように変わっていくのか。まずは現場のご経験が長い鈴木先生から、未来予想をお伺いできますか。 - 鈴木先生:
- なかなか難しい質問ですね。アニメ業界は環境がだいぶ変わってきています。大手企業を中心に、これまでの業務委託メインから正社員登用へと少しずつシフトしています。一方で、アニメの制作本数自体は右肩上がりで増え続けており、慢性的な人材不足が続いています。業界全体として「若手の人材育成に力を入れなければならない」という動きがあるので、教育機関である我々も、即戦力となる学生を育てて業界の裾野を広げていかなければならないと感じています。
- インタビュアーA:
- AIについてはどうお考えですか?
- 鈴木先生:
- 最近では「Sora」のように、リアルな動画を作れる恐ろしい機能を持ったAIも出てきました。ただ、AIはあくまでAIです。人間ならではの創造性がない限りAIも学習できません。元になるコンテンツを供給し続けるのは人間にしかできないことなので、業界が尻すぼみになることはないでしょう。ただ、現場のクオリティ要求が高まり、採用条件が厳しくなるという矛盾も生じているので、そこを解消する仕組み作りが今後の課題ですね。
- インタビュアーA:
- 学生のお二人にも伺いたいのですが、学校で学んできた技術や力を、将来どのように活かしていきたいですか?理想のアニメーター像なども含めて教えてください。
- 小笠原さん:
- 私はこの2年間で学んできたことを活かして、アニメならではの表現力を武器にできるアニメーターになりたいです。実写映画などではできない、描き手によって変わる自由な動きや表現を追求したいですね。今、アニメは多くの人が見るようになっているので、見た人に「この作品はすごい」と思ってもらえるものを作りたいです。
- 多田さん:
- 私は普段からホラー映画などをよく見るのですが、人が驚く表情を観察するのが好きなんです。そうした豊かな表情をアニメーションに落とし込んでいきたいですね。人間には不可能な動きや独特のカメラワークなど、アニメでしかできない表現を描けるようになっていきたいです。
刺激を受けた作品と業界へのきっかけ
- インタビュアーA:
- 最近、刺激を受けた作品や参考にしたい作品はありますか?
- 鈴木先生:
- 私は昔のディズニー作品、例えば戦前の『ファンタジア』などに驚愕します。あの時代にカラーでフルアニメーションを作っていた技術力は本当に凄まじい。あとは『ゲッターロボ』。アニメでしか不可能な、質量を無視した変形合体などは物理法則を超越した面白さがありますね。
- 小笠原さん:
- 私は『リコリス・リコイル』というオリジナルアニメがきっかけです。特に一番惹かれたのは戦闘シーンですね。作画が崩れることなく、人間にはできないような動きが盛り込まれていて。銃の描写も、実際に使われているものを参考にされていて非常に緻密なんです。そういった表現を使って、アニメーションでアクティブな動きができるのは本当にすごいなと思いました。また、この作品は日本の秩序を守るという物語なのですが、その世界観では数年間犯罪が0件なんです。そうした日本の社会問題にも触れつつ、登場人物の心情も深く考えさせられる作品で、ものすごく影響を受けました。将来は制作を担当したA-1 Picturesに入りたいと思っています。
- インタビュアーA:
- その作品が放送されたのは、まだ2〜3年前くらいですよね。
- 小笠原さん:
- はい、本当にそんなに前ではありません。
- インタビュアーA:
- ということは、アニメーターを志したのも割と最近なんですね。それなのに、もう今こうして専門的に勉強されているというのは本当にすごいです。
- 鈴木先生:
- 『リコリス・リコイル』は自分も好きですよ。最近のアニメは原作付きが多いですが、この作品は完全オリジナルなんです。アニメから企画がスタートして、これだけ人気が出てシリーズ化していくケースは最近では少ないので、非常に期待できる作品ですね。確か新作も……。
- インタビュアーA:
- 多田さんにはどうですか?
- 多田さん:
- 私は中学3年生の時に『呪術廻戦』を見て業界に興味を持ちました。自分自身がアニメを見て、その作品にすごく感動しちゃって。それで「私もこんな、人の心に影響を与えるような作品を作ってみたい」と思ったのがきっかけです。特に「懐玉・玉折」編を見てからは、絶対にこの道に行こうと決心しました。最近では海外アニメの『ハズビン・ホテル』や、今敏監督の『パプリカ』のような、不思議な世界観を持つ作品にも強く惹かれています。
学校での学びと失敗談
- インタビュアーA:
- それでは次の質問です。 これまでの学校生活での失敗談や、そこから得た教訓はありますか?
- 鈴木先生:
- 指導側としての悩みですが、毎年入ってくる学生のスケジュールや理解度に合わせて教える難しさを感じています。卒業生から「もっとこういう動きも学びたかった」という声をもらうこともありますが、カリキュラムのコマ数に限りがあるのがジレンマです。ただ、4年制大学よりも短い2年間で現場に出ることはメリットだと思っています。プロの世界は、早く揉まれた方が経験値としての差が絶対に出ますから。
- インタビュアーA:
- ありがとうございます。専門か大学か迷ってる子にとってはすごくいい話になると思います。では続いて、お二人に具体的エピソードとして、失敗談をお願いします。
- 多田さん:
- 私は入学するまでクロッキーやデッサンを全くやったことがなかったので、もっと早くから調べて取り組んでおくべきだったと思いました。また、合同制作では連絡事項がうまく伝わらずに作業が遅れてしまったことがあり、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」の大切さを痛感しました。
- 小笠原さん:
- 私も本格的なクロッキーの授業は学校に入ってからだったので、自主的に始めておけばよかったです。あと、1年次の進級制作では一人でやる作業量とスケジュール管理が甘く、納得のいくクオリティに達せませんでした。自分の画力と管理能力の両面で、計画を立てることの重要性を学びました。
- インタビュアーA:
- お二人の話を聞いていると、やはりアニメーターになる上では「クロッキー」を早く始め、たくさん描くことが重要なのでしょうか。
- 鈴木先生:
- そうですね、間違いないです。高校生でもアニメ業界に興味があるなら、YouTubeでも何でもいいからまずは見て始めた方がいい。ただ、注意点もあります。よくある30秒ドローイングのようなアプリは、設定が早すぎるんです。基礎がない人が早く描くことばかり意識すると、わけのわからない崩れた形を量産するだけになってしまう。
- インタビュアーA:
- 基礎ができないまま、形が破綻したものを出し続けてしまうわけですね。
- 鈴木先生:
- そう。まずは、広告の人物などをただただ模写してみてください。その際、時間だけ測っておく。最初は時間がかかっても、繰り返せば自動的に速くなります。「15分くらいで描けるようになったな」と思ったら、そこを目標にする。いきなり速度を求めるのではなく、まずは正確な形を覚えることが大切です。
- インタビュアーA:
- 基礎をしっかり固めた上で、意味のある「数」をこなすということですね。お二人もそれを実感していますか。
- 小笠原さん・多田さん:
- はい、本当にそう思います。
- 鈴木先生:
- 「どうやったら早く上手くなりますか?」という近道はよく聞かれますが、そんな魔法があれば苦労しません(笑)。でもコツはあります。「何に注目し、何を意識して練習すべきか」を論理的に考えること。それを教えるのが学校だと思っています。
お互いへのエールと感謝
- インタビュアーA:
- そろそろまとめに入らせていただきます。まずは鈴木先生から、これから社会に出るお二人へメッセージをお願いします。
- 鈴木先生:
- 仕事は学校と違って責任が求められる世界になります。新人さんはまず、言われたことを確実にこなすことが何より大切です。特に絵の世界にゴールはなく、日々勉強です。その時々で「ここまでやれたなら自分は頑張った」と思える設定値をクリアできるよう、一歩ずつ進んでいってください。あとは、早くエンドロールに名前が載るのを楽しみにしています。やっていれば必ず載りますから。
- 小笠原さん・多田さん:
- 頑張ります!
- インタビュアーA:
- ありがとうございます。では、学生のお二人から鈴木先生へ感謝や応援の言葉をお願いします。
- 多田さん:
- とにかく長生きしてください! お体が心配なので、健康的な生活を送って、いつまでもこの学校にいてほしいです。学祭や卒展に来た時に先生がいないと悲しいですから。本当にお体を労ってください。
- 鈴木先生:
- 一応、定年はあるんだけどね(笑)。でも、卒業生が会いに来てくれるのは嬉しいことですよ。
- 小笠原さん:
- 私も、先生には健康で長生きしてほしいです。この2年間で教えていただいた基礎的なことはしっかり身についているので、これから入ってくる後輩たちも、引き続きよろしくお願いします。
未来の後輩たちへ
- インタビュアーA:
- 最後に、アニメ業界を目指す高校生へアドバイスをお願いします。
- 鈴木先生:
- 「アニメを見るのが好き」なのと「描くのが好き」なのとでは大きな違いがあります。自分が何時間も絵と向き合っていられるかを考えてみてください。ただ、「向いている・向いていない」はやってみないとわかりません。自分が感動をもらったように、今度は誰かを感動させる立場になりたいと思うなら、ぜひ挑戦してほしいです。
- 小笠原さん:
- 学校選びでは、実際に足を運んでカリキュラムを見比べることが大事です。ここは2年間しっかりアニメーションだけに集中できる環境があり、少人数制なのも魅力でした。ネットの情報だけでなく、実際に自分の目で確かめてほしいです。
- 多田さん:
- 私は親と相談して、卒業後の就職サポートが手厚いここを選びました。最初は他の学科と迷ったこともありましたが、最終的にはアニメ科に進みました。小さい頃から自分が「なりたい」と思っている気持ちを信じて続けていけば、いつか夢は叶うと思います。
対談を終えての感想
- インタビュアーA:
- 最後にこの対談を終えての感想、何かありますか?
- 鈴木先生:
- こういう機会がなかったので自分の考えを整理することができました。
- 多田さん:
- 楽しかったです。思ったより話せたかなと思います。
- 小笠原さん:
- 改めてこういう話を真剣にする機会があって、新たな意見がもらえたなと思いました。自分だけでは思いつかないような考え方も聞けて、とてもためになりました。
- インタビュアーA:
- 現場のリアルな空気感が伝わるお話をありがとうございました。
- 全員:
- ありがとうございました!